ウールの秘密 大学との共同研究から見えてきた新たな可能性
日本毛織株式会社(ニッケ)では、衣料繊維のさまざまな側面を探求するため、大学との共同研究を行っています。
今回は、その中の「肌離れ性」、「汗冷え」、「ぬくもり感」についての興味深い共同研究の結果についてお話ししたいと思います。特に、ウールについての新たな発見について紹介します。
「肌離れ性」の評価
まず、「肌離れ性」についてです。
あまり聞きなれない言葉かと思いますが、汗などで濡れた衣服が肌にはりつく嫌な感じがどれだけ軽減されるかと思っていただいたらわかりやすいかと思います。
肌離れ性が高いほど快適だという理解になります。
この研究では、肌離れ性を数値化するための新たな評価方法を開発しました。具体的には、人間の肌と衣料の間に生じる摩擦力を測定し、その値をもとに肌離れ性を評価する方法です。
その結果、ウールは同じ水分量でも表面の濡れ方が少なく、肌離れ性に優れていることがわかりました。ニッケでは、皆様に肌離れ性を体験できるような実験器具も開発をして、様々なイベントで体感いただく予定です。
「汗冷え」の評価
次に、「汗冷え」についてです。
暑い日に外を歩いて汗をかいたあとに電車に乗っていると、体が冷えて寒く感じたことはありませんか?
これは、温度変化や風のせいで、汗が気化し、そのときに体温が奪われてしまうために生じる現象です。
この研究では、ウールが他の素材に比べて汗冷えしにくいことを確認しました。具体的には、ウールと他の素材を比較し、それぞれの素材がどれだけの速さで水分を吸収し、どれだけの速さで水分を放出するかを測定しました。
その結果、ウールは他の素材に比べて水分の吸収・放出が遅く、汗冷えしにくいことが実験結果として確認することができました。
登山家の皆様がウールのインナーを着用されるのは、この汗冷えのしにくさも大きな理由です。
「ぬくもり感」の評価
最後に、「ぬくもり感」についてです。
「ぬくもり」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?
おんぶされた時のお母さんの背中、あったかい布団に入ったとき、ペットのワンちゃんを抱っこしているときの感じ・・・、人によってそれぞれあると思いますが、悪いイメージではないですよね。
こうした「人間の感性」とういう論理的に説明しにくい反応を科学的に計測し、ものづくりに活かそうとする学問を「感性工学」といいます。
この研究では、ぬくもり感が高い素材の開発を目指しました。まずは、「かたい ⇔ やわらか」「ざらざら ⇔ つるつる」などいくつかの対義語を準備し、その中から被験者が対象の布地を触ったときの印象を、その強さも含めて記録していきます。
選んでもらった言葉、布地の物性値などなどの関係性を分析した結果、ある程度、人間の感性に近いモデル(数値化)がでました。この数値化により、「ぬくもり感」に優れた素材の開発が意図をもってできるようになります。
これからも、ニッケは、大学との共同研究を通じて、衣料繊維の新たな可能性を追求していきます。
NIKKE 1896では、このような研究結果も参考に皆様に快適な生活をお送りいただけるような商品開発に取り組んでいます。
ウールの新たな可能性について、これからも最新の情報をお届けしますので、お楽しみに。