「これってメリノウールですか?」についてお答えします。

お客様にウールのTシャツをお見せしていると、「これってメリノウールですか?」とのご質問をうけることが多くあります。

メリノウールは、オーストラリアやニュージーランドなどで数多く飼育されている「メリノ種」という羊の毛のことです。

世界で3,000種類以上いる羊の中でも、その繊維の細さや白さが特徴で、ファッション衣料で広く採用されています。

メリノ種からとれるメリノウールは、繊維が細いため、上質な艶感となめらかな肌触りで、機能性も高いため、羊毛の中でも最も高級な素材とされています。

ですので、高級品にしかメリノウールが使用されていないとの印象をお持ちの方が多いのかもしれません。

でも、実は・・・。

絨毯など強度の必要なものは、毛の太い種類の羊の毛が使用されることが多いのですが、直接肌に触れるインナーや靴下、スーツなどの衣料品で使用しているウールのほとんどが、メリノウールなんです。

インナーのウール=メリノウールでほぼ正解です。 

メリノウールはチクチクしない?

インターネット上では、メリノウールはチクチクしませんと記載されているもの見かけます。それは果たしてホントでしょうか?

実は、チクチクは人によって感じ方に差があるため、メリノウールのTシャツを着てみたときに、「全然問題ない」と言う人と、「やっぱりチクチクして無理」という人に分かれます。

世界的に見ると、日本人は繊細で比較的チクチクを感じやすいようです。

多少我慢してでもメリノウールのTシャツやインナーを着るのは、汗冷えを防ぎ命の危険から少しでも遠ざけることができるからです。

特に山登りでは昔からインナーにはウールと言われてきました。

繊維が細いと言われるメリノウールなのになぜチクチクするのか、実は人間の髪の毛と同様に、羊も太い毛と細い毛が生えるため、太い毛が肌に当たるとチクっと感じるのです。

繊維の太さを表す記号「ミクロン」とは?

ウール繊維の太さは「ミクロン」「マイクロ」などと呼ばれる「μ」という記号が使われます。

100万分の1という意味で、人間の髪の毛は大体6080マイクロメートル(μm)です。

1マイクロメートルは、1メートルの100万分の160μm0.06mm

メリノウールはその3分の1程度の約20μmが一般的に広く使用されており、0.02ミリメートルと聞くと、とっても細く感じますよね。

シャープペンの芯は0.5ミリが一般的ですので、その25分の1と言われてもピンとこないかもしれませんが、細いことはわかります。

また、メリノウールは、自然の中で育つ生き物ということもあり、毛の太さは12μm25μm程度までの違いがでます。ちなみに参考として、カシミヤは約1416μmと言われています。

肌着にふさわしいメリノウール繊維の細さ(繊度)は?結局どれを選べばいいの?

肌に触れるインナーは、チクチクしないものが良いですよね。

チクチクの原因は、繊維の太さ(繊度:せんど)による影響が大きいので、肌が敏感な方は、少なくとも17.5μ以下の原料が使われている物を選ぶとチクチクが軽減されるでしょう。

さらに細い15.5μ以下のものは着心地が抜群で、敏感肌の方にもおすすめできます。

17.5μはスーパー120(Super120’s)15.5μはスーパー160(Super160’s)とも表記されます。

<要注意!>

生地の重さ(目付とも言う)g/㎡という表記があり、1平方メートル当たりの重さを数字で表します。メリノウールのインナーには、160g/㎡や、200g/㎡などの重さのものがあり、

一番肌に触れるベースレイヤーには薄手の160シリーズ、ミッドレイヤーには200シリーズなどと記載があります。

同じ160でも、繊維の太さを表すスーパー160なのか、生地の重さ(や厚さ)を意味する160グラムなのか、間違わないように注意してください。

細さを表すのは、「ミクロン(μ)」または「スーパー(Super)」です。

メリノウールの細さ(繊度)と強度の関係は?

繊維一本一本は、細い方が強度は弱くなります。一方太くなればなるほど、強度は増しますが、どんどんチクチクするようになります。

肌触りの良いメリノウールは生地が薄くなったり破ける心配があるかもしれません。しかし3本の矢の話ように、一本では弱い繊維も、何本も並べることで強度が高まります。

同じ太さの糸を作る場合、一本の繊維が細い方がその本数は多くロープのように束状になり、結果的に糸の強度は高まります。

逆に一本の繊維が太い方がその本数は少なくなり、麻ひものように荒くざらざらとした状態となります。細いメリノウールを無数に並べて、しっかりと作られた生地であれば、滑らかさと丈夫さの両方が叶えられるのです。

ハードなスポーツやリュックなどで服への摩擦の激しい状況では、ウールよりも強度の高いポリエステルやナイロンの力を借りることも良いでしょう。

ウール×合成繊維ミックスは、スポーツやアウトドアシーンにも適しています。

どれだけチクチクするかは予測できる

先ほどお話したとおり、繊維の太さがチクチクに影響しますが、生地の仕上げ方でもチクチク感を軽減させることができます。

日本毛織株式会社では、チクチクに与える繊度(繊維の太さ)・物性の影響を研究し、繊度と生地物性(2HG)からチクチク感を予測することが可能となりました。

 詳しい計算方法や生地作りについてはここでは長くなるので割愛しますが、変数としての➀繊維の細さ=繊度を細くし、➁生地の作り方を工夫すると、チクチク値が低く抑えられます。

つまりチクチクしなくなります。日本毛織では、生地を企画する設計者(テキスタイルデザイナー)や研究開発者が日々試行錯誤し、工場の技術者が安定して生産ことができる良い風合いの生地作りに挑戦しています。

特に生地作りでは、風合いの善し悪しを大きく左右する「仕上げ」工程にポイントがあります。生地を洗って揉み込んだり、表面の毛羽を刈ったりしながら、上品な艶とほわっとしたやさしい肌触りに仕上げます。

NIKKE 1896のメリノウールはしっとりなめらか

NIKKE 1896のメリノウールはしっとりなめらか

NIKKE 1896では、これらの研究結果も活用しながら、より快適に着用することができるメリノウールのウェアを開発し、皆様にお届けしています。

使用するメリノウールの繊維の細さ=繊度は、17.5μm(Super120’s)16.5μm(Super140’s)15.5μm(Super160’s)などの細いメリノウールをスーツやコート、シャツなどに使用しています。

特にチクチクを感じやすいTシャツやインナーには、15.5μm(Super160’s)14.5μm(Super180’s)13.5μm(Super200’s)と、世界最高峰の細さのメリノウールを使用しています。お客様の不快なチクチクをなくしたい、そんな想いでこだわっています。

お陰様で生産が追い付かない状態となっておりますが、少しでも多くの方にご提供出るよう、原料の仕入れから糸作り生地作りの工程を丁寧に進めております。

メリノウールの中でもニュージーランド産のメリノウールはしっとりと肌触りが良く、日本毛織では36年前から羊の飼育とメリノウールを開発することに始まり、世界最高級のメリノウールを厳選しています。

メリノウールのウェアの選び方にお困りの際は、NIKKE 1896のウールの伝道師たちにご相談してみてください。

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