「デジタル製品パスポートって何?EU発の新しい“服の履歴書”」

 最近、サステナビリティやトレーサビリティに関するニュースで「デジタル製品パスポート(Digital Product Passport / DPP)」という言葉を見かける機会が増えました。

これは、ひとことで言えば「製品の一生に関する情報を、デジタル上で紐づけて管理・閲覧できるようにする仕組み」です。

特にEU(欧州連合)では、環境規制の一環として、衣類や靴を含むさまざまな製品にデジタル製品パスポートの導入を進めており、今後数年で本格運用が始まると見られています。

この記事では、デジタル製品パスポートとは何か、なぜ今注目されているのか、そして私たちが日々手にするウールウェアの世界にどのような影響があるのかを、できるだけわかりやすく解説します。
 

1. デジタル製品パスポートとは?

デジタル製品パスポート(DPP)は、製品ごとに固有の「デジタルな情報ファイル」を持たせる仕組みです。


商品タグのQRコードやバーコードをスマートフォンで読み取ると、その製品に関する詳細な情報にアクセスできる、というイメージが近いかもしれません。

従来のタグやラベルには、素材表示や生産国など限られた情報しか載せられませんでした。


一方DPPは、次のような情報をデジタル上にまとめて保存し、必要な人が必要なタイミングで参照できるようにすることを目指しています。

・原材料は何か、どこから来たのか

・どこの工場で、作られたのか

・どのように使い、どのように手入れをすれば長く使えるか

・修理は可能か、どう依頼すればよいか

・役目を終えた後、リサイクル・リユースはどう行えばよいか

・原材料調達から製造・リサイクルまで、環境負荷はどれぐらいか(CO2の排出量等)

つまりDPPは、製品の「生まれてから役割を終えるまで」をつなぐ「デジタルな履歴書」と言えます。

2. なぜ今、DPPが注目されているのか?

EUの環境規制とサーキュラーエコノミー

DPPが最も注目されているのは、EUが環境政策の一環として導入を進めているからです。

EUは「欧州グリーンディール(European Green Deal)」のもと、温室効果ガス排出の削減や資源循環型の経済(サーキュラーエコノミー)への転換を目標に掲げています。

その中核をなす施策のひとつが、製品の設計段階から環境負荷を減らす「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPREcodesign for Sustainable Products Regulation)」です。

このESPRの枠組みの中で、多くの製品カテゴリーに対してデジタル製品パスポートの導入が検討・準備されています。対象となるカテゴリーには、以下のようなものが含まれます。

・繊維製品(衣類、靴など)

・家具

・バッテリー など

 

繊維・ファッション分野については、「持続可能な循環型繊維戦略(EU Strategy for Sustainable and Circular Textiles)」の中で、製品寿命の延長やリサイクルの促進、グリーンウォッシング(誤解を招く環境配慮表示)の防止などと並んで、DPPの導入が重要な柱として位置づけられています。

現時点の情報では、繊維製品へのDPP導入は早ければ2027年~2028年にかけて段階的に進むと見込まれており、EU向けに製品を展開するブランドやメーカーにとっては、今から準備が欠かせないテーマとなっています。

3. 消費者にとってのメリット

デジタル製品パスポートが導入されることで、消費者にとっては次のようなメリットが期待されています。

 「何で、どこで作られたのか」がわかる安心感

・素材や産地情報がわかることで、納得して商品を選びやすくなります。

・「環境に優しい」といった抽象的な表現だけでなく、具体的な情報に基づいた判断がしやすくなります。

長く使うための手入れ情報の充実

DPPを通じて、洗濯頻度やケアのコツを詳しく確認できれば、結果として製品寿命の延長につながります。

リセール・修理のときにも役立つ

・中古として手放す際に、素材や購入時期、ケア履歴などの情報があれば、次の持ち主にも安心して渡せます。

・修理を依頼する際にも、製品の仕様情報があればスムーズです。

 

4. これから私たちができること

デジタル製品パスポートは、まずEUを中心に法規制として広がっていく見込みですが、その影響は各国のブランドや消費者にも及んでいくと考えられています。

消費者としてできることは、今から少しずつ「情報を見て選ぶ」習慣を持つことかもしれません。

・素材表示や生産国だけでなく、ブランドが公開している背景ストーリーやサステナビリティの情報に目を向けてみる

・長く着られる素材やデザインかどうか、お手入れ方法も含めて考えてみる

・必要なものを、納得して選ぶ

デジタル製品パスポートは、単に新しいルールというだけでなく、「作り手」と「使い手」が情報を共有しながら、ものを大切に使っていくための新しい土台のひとつになっていくはずです。

日本毛織株式会社でも、皆様が安心して衣服を着用いただけるようデジタル製品パスポート(Digital Product Passport)への対応をすすめています。