冷え性の人が暖かい靴下を選ぶとき、厚さだけではない、素材や靴との関係
冷え込む朝、手持ちの中でいちばん厚い靴下を選ぶ。それなのに、夕方には足先がひんやりしている。冷えが気になる人なら、覚えのある経験かもしれません。
理由はシンプルです。靴下の暖かさは、厚さだけでは決まらないから。この記事では、素材と編み、そして靴との関係から、その仕組みを順に見ていきます。
暖かい靴下の働きは、2つ
足を温めているいちばんの熱源は、体の中を流れる血液です。靴下の役割のひとつは、その熱を外へ逃がしにくくすること。
もうひとつが、吸湿発熱です。ウールのように湿気を吸う素材は、足から出る汗の湿気を吸うときに、繊維そのものが熱を出します。
熱を逃がさないこと。湿気を吸って熱を出すこと。暖かい靴下を選ぶというのは、この2つがきちんと働く一足を選ぶことです。
暖かさの正体はソックスの「厚み」だけではない
生地の体積の大半は、繊維ではなく空気です。動かない空気は熱を非常に通しにくいため、生地の保温性は、繊維のあいだにどれだけ空気を閉じ込められるかでほぼ決まります。
厚手の靴下が暖かく感じるのは、このためです。ただし、厚くしても効かなくなる場面が3つあります。
① 潰れると、空気がなくなる
足裏は体重で押しつぶされるため、どれだけ厚い生地でも空気はあまり残りません。靴を履いているとき、足裏の断熱を主に担っているのは靴底とインソールです。靴の中で靴下の厚みが生きるのは、甲やつま先まわりです。
② きつくなると、熱の供給が減る
ぴったりした靴に厚手の靴下を合わせると、つま先が圧迫されます。足先を温めているのは血流ですから、圧迫はその熱源を削る方向に働きます。末端が冷えやすい人ほど、厚みよりも締めつけないことのほうが大切です。
③ 厚いほど、湿気が抜けにくい
生地が厚くなるほど、汗の水蒸気は外へ抜けにくくなります。溜まった湿気は、次に見るように保温性そのものを下げます。
見るべきなのは単に「厚いかどうか」ではなく、「空気を、潰れずに、湿らせずに保てるか」です。ウールの繊維は細かく縮れていて、押されても元のふくらみに戻ろうとします。この弾力が、空気の層を保つ助けになります。
汗冷えは、足が汗で湿った状態になると起きる
足が湿ると冷えるのは、なぜでしょうか。
水は、空気の20倍以上も熱を通します。汗が液体のまま繊維のあいだに入り込み、空気の層を水が埋めてしまう。これが「汗冷え」の正体です。素材による違いは、汗をどこに持つかで生まれます。
・ ウール:湿気をまず繊維の内側に取り込みます。表面は水をはじく性質があるため、繊維のあいだの空気が残りやすく、湿っても肌はさらっとしていて、ふくらみを保ちやすい素材です。
・ 綿:水を繊維のあいだに抱え込みやすく、乾きにくい素材です。濡れるとふくらみも落ちるため、空気の層が失われやすくなります。
・ ポリエステル:水をほとんど吸わず、汗は液体のまま繊維のあいだを移動して早く乾きます。ただし、通気のない靴の中では乾く先がなく、水分が残りやすくなります。
吸湿発熱:湿気を吸うと、繊維が熱を出す
繊維が湿気を吸うと、そのとき繊維自体が熱を出します。これが吸湿発熱です。靴の中で足の湿気を吸えば、靴下そのものが温まります。
どれだけ熱を出せるかは、どれだけ湿気を吸えるかで決まります。その量は、素材によって大きく違います。
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素材 |
水分率(20℃・相対湿度65%) |
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ウール |
16% |
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シルク |
9% |
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綿 |
7% |
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アクリル |
0.6〜1.0% |
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ポリエステル |
0.4〜0.5% |
出典:繊維学会 編『繊維便覧 第3版』丸善出版、2004年「繊維の性能表」
ウールが吸える湿気は、ポリエステルの数十倍。そのぶん、吸湿発熱も大きくなります。
ただし、この熱が出るのは湿気を吸っているあいだです。吸いきれば止まり、乾くときには反対に熱を奪います。靴を脱いだあと、足がふっと冷えることがあるのはこのためです。
吸湿発熱は、ずっと温め続けるヒーターではありません。蒸れ始めの冷えをやわらげる働き、と考えるとわかりやすいでしょう。
ソックスは、靴との組み合わせで選ぶ

汗は乾くとき、まわりから熱を奪います(気化熱)。肌の上で乾けば、肌が直接冷えます。どの素材が向いているかは、どれくらい汗をかくか、どんな靴を履くかで変わります。
家でじっとしているとき
寒い日の家の室内など、靴を履いておらずあまり動かないとき、湿気は外に逃げやすい状態です。また、靴下もつぶれにくいでしょう。この場面では、靴のことを気にしたくても良い【厚い靴下がおすすめ】です。スリッパと組み合わせると床冷えも防ぐことができます。
外で長く歩くとき、汗が多いとき
汗の量が増えると、ソックスでは湿気を吸いきれなくなり、水分として湿ってきます。ここでは、汗を早く乾かす力、汗冷えを防ぐチカラが必要です。【ウールに合成繊維を組み合わせたソックス】は、吸湿性と速乾性が高くおすすめです。合成繊維が摩耗にも耐える強度を与えてくれます。
通気性のない革靴やブーツの中
湿気の逃げ場がない靴の中では、汗が溜まっていきます。その状態で靴を脱いだり、冷たい場所に出たりすると、溜まった汗が一気に乾いて熱を奪います。
あまり分厚いソックスを履くと、ソックスがたっぷりと湿気を吸いこみ湿ってしまいます。【薄手~中肉厚のソックス】を履いて、靴とソックスの隙間から空気を逃がすとよいでしょう。
ソックスの代わりに、インソールを厚めにしたり、冷え性の方はウールのインソールもおすすめです。
靴と冷えの関係
靴下の性能が発揮できるかどうかは、靴しだいです。見るポイントは、底と甲の2つです。
底部分:床からの冷え
立っているとき、足の熱は床や地面に触れている足裏からも逃げていきます。クッション性のある厚めの靴底は、この冷えを伝えにくくします。薄い革底や薄いゴム底は冷えを伝えやすく、ウールのインソールを足すと効果的です。
甲部分:風と湿気
・ メッシュ素材:湿気は抜けやすい一方、冷たい外気や風も入りやすく、寒い屋外では熱が逃げやすくなります。
・ 天然皮革:ある程度湿気を吸い、通しますが、汗や雨でぬれると冷えの原因となります。
・ 合成皮革・ゴム:湿気をほとんど通さないため、靴の中が蒸れやすく、汗冷えや後からの冷えにつながりやすくなります。
そして、靴の中のゆとり。窮屈な靴では、靴下の空気の層が潰れ、締めつけで血流も妨げられます。暖かい靴下を選ぶときは、その靴下が収まる余裕があるかまで含めて考える必要があります。
素材と編みから考えた、2つのソックス
NIKKE 1896には、履く場面の違いから生まれた2つのウールソックスがあります。

靴を脱いで過ごす時間のためのソックスです。約3年の研究と試作を重ねてつくられました。使っているのは、17.5μmのニュージーランド産メリノウール。
内側はウールの糸をループ状に編み込んだパイル構造で、その厚みがそのまま空気の層になります。
足の湿気はウールが吸い、吸湿発熱にもつながります。負荷のかかりやすいつま先とかかとには、ナイロンを使って補強を施しています。男女ともに履けるフリーサイズです。

靴を履いて長く過ごすためのソックスです。使っているのは、日本毛織が開発した特殊紡績糸「NIKKE AXIO」。
ウール繊維の束の内側にフィラメントを包み込んだ構造で、肌に触れる側はウール、合成繊維の強度も与えています。湿気を吸って熱を出すウールの良さと、乾きやすさ・強さを、一本の糸の中で両立させています。
編み方も部位ごとに変えています。体重がかかる足裏はクッション性のあるパイル編み。靴の中でかさばると圧迫につながる甲は、薄く。
足首はリブ編みで、ほどよくフィット。厚みを足すのではなく、靴の中での過ごしやすさから組み立てた一足です。
NIKKE 1896が、靴下を素材と編みから考える理由
暖かい靴下というと、まず厚さに目が向きます。けれど実際には、空気をどう保ち、湿気をどう受け止め、どこで履くのかで、足元の心地よさは変わります。
NIKKE 1896を企画運営する日本毛織は、1896年の創業以来、ウールに携わってきました。
だからこそ、「ウールだから暖かい」で終わらせない。どんな糸を使い、どう編み、どこで履くのか。同じウールでも、その答えはひとつではありません。
よくある質問
Q. ウールの靴下はチクチクしませんか?
A. チクチク感は、肌に当たる繊維のうち、太いもの(直径約30μmを超えるもの)がどれだけ混じっているかに大きく左右されることが研究で示されています。
今回の2足に使っているメリノウールは平均17.5μmと細く、太い繊維が混じりにくい原料です。ただし、感じ方には個人差があります。
Q. 暖かい靴下は洗濯機で洗えますか?
A. 製品ごとの洗濯表示を確認してください。今回紹介した2種類は洗濯機で洗える仕様です。タンブラー乾燥は避けてください。
Q. 寝るときに靴下を履いてもいいですか?
A. 履く場合は、締めつけの弱いものを選んでください。寝ているあいだも足は汗をかくため、暑さや蒸れを感じたら脱ぐなど、その日の状態に合わせて調整しましょう。
Q. 靴下を重ね履きすると、もっと暖かくなりますか?
A. 靴に十分なゆとりがあれば、空気の層が増えて暖かく感じることがあります。
ただし、靴がきつくなるなら逆効果です。生地が潰れて空気が減り、締めつけで血流も妨げられ、湿気もこもりやすくなります。
Q. 暖かい靴下は、いつ買い替えればいいですか?
A. パイルが潰れて平らになり、戻りにくくなったら、空気を抱える力が落ちているサインです。かかとやつま先が薄くなってきたときが、買い替えの目安になります。
厚さだけでなく、足元の湿気のコントロールが重要。
暖かい靴下を選ぶとき、厚さはもちろん大切です。でも、それだけでは足りません。
・ その厚みは、潰れずに空気を保てるか
・ その素材は、汗の湿気を吸って、湿気を吐き出してくれるか
・ その一足は、どの靴で、どこで履くのか
厚さも大事ですが、ソックスの素材と靴を考える。それが、冷えやすい足元を心地よく保つための、賢い選び方です。あたたかな冬を過ごせますように。
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