ニッケを纏う大人たち 。ビジネスパーソンインタビュー vol.04 株式会社CUBISM代表 visvim クリエイティブディレクター 中村 ヒロキ 様

2000年にブランドを設立して以来、素材と丁寧に向き合うタイムレスなものづくりで、国内外を問わず、良質なファッション・プロダクトを求める人々を魅了し続けている『visvim』。他とは一線を画すそのスタイルに秘められた、未来へ残っていくものをつくるというアイデンティティの真意とは。そして、インスピレーションの源泉となるビンテージへの想いとは。NIKKEとの取り組みのお話も交えて、クリエイティブディレクターの中村ヒロキさんに伺いました。

-----世界中にファンを抱える『visvim』のものづくりにおいて、中村さんが大切にしていることについてお聞かせください。

中村様:ファッションというマーケットに身を置いていますが、僕らの仕事は、美しいものや歴史あるさまざまなアーカイブにインスピレーションを得て、現代のものへと繋げていくこと。そして、それらがやがてアーカイブとなっていくものづくりを、『visvim』では大切にしていますね。だからこそ、僕らのフィルターも研ぎ澄ませ続けないといけないし、ものに対する純粋な見方も必要になってくる。ロサンゼルスを拠点に日本やフランスを行き来しながらインスピレーションとなるものを集め、ニュートラルになれる場所で見るようにしているのも、そのためなんです。バイアスのかからないように、いかにフラットな状態で見るか。新しいものを生み出していくには、そのフィルターと見方もとても重要だと思っています。

-----一宮のNIKKE創作工房には、明治時代から積み重ねてきた生地見本や、戦前のヨーロッパの生地見本をアーカイブしています。『visvim』のものづくりを通じた、中村様のビンテージへの想いについてお聞かせください。

中村様:もともと、自分の中でワクワクしたり、引っかかるものと言えば、古いものが多かったりするんです。ビンテージアイテムや昔のファブリックが、そう。例えば、つくり方やつくられた背景、コンストラクションなど、ビンテージには見た目だけじゃないファクターがたくさんあって、ものづくりする上でのいろんなヒントにもなります。僕らのものづくりも今はひとつの点かもしれないけど、長い歴史の中で大きな流れにしていきたいからこそ、絶対に力は抜けない。この先いつか、「あの時代につくっていた『visvim』の服はスゴいね」と思ってもらいたいですからね。でも、その想いはNIKKEさんも同じはず。明治時代からのアーカイブを見せてもらって、改めてそう感じましたね。昔から積み重ねた生地見本を大切にされているし、ビジネスという範疇を超えて、「生地が好きで、いいものをつくりたい」というNIKKEさんの本質が表れているなと。このままずっと部屋にいて、すべての資料を見たいくらいです。

-----過去の美しいものを新しい感覚で現代へと繋げていく中で、NIKKEとはどのような関わり方をされていますか?

中村様:NIKKEさんとは、『visvim』のファブリックを毎シーズン一緒につくっています。もう9年くらいですね。担当していただいているテキスタイルデザイナーの大野さんとはミラノで初めて会ったんですが、僕が持参していた古いファブリックにも反応してくれたのを覚えています。職人肌の方だなって、すぐ分かりましたね。僕の場合、つくり方を細かく伝えるというよりも、インスピレーションを得たものに対する自分のフィーリングを伝えるタイプ。色や手触りなどいろいろあるけど、パッと感じたことをロジカルに分析し、そこから感性の部分でキャッチボールしていくんです。大野さんはそのフィーリングを解釈して掴み、必ず近づけようとしてくれます。

NIKKE 大野:何シーズンも一緒につくっていると、「中村さんはこうかな?」と感覚的に理解し、提案できることもありますね。ただ、テキスタイルデザイナーとして大切にしているのは、「このフィーリングを、現代のものへどう注入するか」という部分です。

中村様:そこが大野さんであり、NIKKEさんを信頼しているところです。表面的に似せるのではなく、その奥の部分まで見てくれている。ちゃんと内面からつくろうと思っている気概は、生地を触るとすぐ分かりますからね。だから、大野さんやNIKKEさんが普段は扱ってなさそうなものをお願いしたりもするんです。仕上がりがすごく楽しみだし、ここにしかない意外性や驚きが生まれたりするので。

NIKKE 大野:ハードルが高い(笑)。でも、10年、15年と気に入って着続けてもらいたいし、一生愛してほしいと思うので、その覚悟を持ってつくろうとしています。一過性のファッションはすぐ飽きたり、大事にされなかったりもしますから。そういった面で『visvim』は、もはやファッションという領域ではないと僕は思っていますね。

中村様:ありがとうございます。残したいもの、残っていくもの、『visvim』はそんな存在を目指したい。僕たちのことを理解して、同じ視点でものづくりができる人たちと一緒に取り組めていることは、本当に幸せですね。

-----未来へ残っていくものをつくる、そのモチベーションの源とはなんでしょうか?

中村様:自分の好きなもの、自分がいいと思うものをつくりたいのはもちろんだけど、ミーニングフルなものをつくりたい。ものづくりにはいろんな手法がありますが、例えばそのものの背景だったり、永く使って楽しめるロングラスティングなものだったり、ものから伝わるパッションだったり。そういったものを身に付けたいし、そこに幸せを感じることがモチベーションであり、ものづくりへの衝動になっています。『visvim』を立ち上げたときから、この想いはずっと変わらないですね。ものづくりに携わっている人は、みんな「いいものをつくりたい!」と思っているはずだと思います。僕の場合も単に販売するものをデザインしてつくるだけでは充実感が得られなくて。自分の中で定義と意味をしっかりと持って、ものづくりを掘り下げ続けてきました。その結果、今に至るという感じですね。

-----「NIKKE 1896」では、NIKKEのアーカイブを活用したコレクションを現在開発しています。そういったビンテージを現代に甦らせる取り組みについてのご意見をお聞かせください。

中村様:僕らがそうであるように、NIKKEさんも同じ想いを持って取り組まれているので、本当に未来へ残っていくものが生まれると思います。『visvim』を通じて一緒にものづくりをしてきて実感しているのは、NIKKEさんは内面からちゃんとつくるということ。だからこそ、表面に格好良さやアジといった雰囲気がにじみ出てくる。そして、NIKKEさんにしか出せない個性も出てくる。やはり、ものづくりにはつくり手の個性が絶対に出ますからね。表面的なものづくりは時間が経つと薄っぺらい感じが出てきてしまう。NIKKEさんは歴史あるファブリックメーカーで、過去のアーカイブを沢山持っていらっしゃいますよね。これまで積み重ねてきたヘリテージを現代のものづくりを通して次の時代に繋げて頂きたいです。

※ヘリテージ:継承、伝承

そのものの背景、永く使いたいと思う愛着、ものから伝わってくるパッション。決して表面的ではない着る意味のあるものづくりこそ、『visvim』が世界中のファンから支持されている証。そのものづくりにかける想いは、NIKKEも同じです。

インタビュー 2019年3月

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